家主が「自分の手でシロアリ駆除をしたい」と考えるのは当然のことです。シロアリ駆除業者に依頼すれば経費がかかりますし、何より自分の家は自分で守りたいという思いがあるはずです。
そこでシロアリ駆除剤の人やペットへの影響、そして安全性について見ていきましょう。

毒を扱うので「駆除剤の知識」は不可欠

自分の手でシロアリ駆除しようと考えている方は、駆除に使う薬剤は「あのシロアリを叩くことができるほどの毒」であることを理解しておいてください。
少し難しい話になってしまうのですが、シロアリ駆除剤の知識を身につけておいたほうがいいでしょう。

危険であるという認識を持って

自宅で使用する駆除剤は、人やペットに安全なものを選んでください。最近は規制が強化され人やペットに深刻な影響を及ぼす駆除剤は販売されなくなりましたが、かつては、人の命に影響する駆除剤も普通に入手することができていました。そのような危険や薬剤が出回っている可能性はゼロではないので、駆除剤の価格が安くても絶対に怪しい業者から買わないようにしてください。
また、正規の業者から安全性が高いといわれる駆除剤を購入する場合も、「食べて大丈夫というシロアリ駆除剤はない」ということを認識しておいてください。シロアリ駆除剤は、最も安全性が高いものでも「安全性が高い」といったレベルにすぎません。「完全に安全」なシロアリ駆除剤は存在しないと認識しておいてください。

効かないことがあることを知っておいて

一般の方は「シロアリ駆除剤というくらいだから、シロアリが駆除剤に触れた途端にコロリと死んでしまうのだろう」と考えるかもしれません。しかし実際はそう簡単にはいきません。

一般の人がシロアリ駆除をすると、次のような事態が起きる可能性があります。

  • 駆除剤を嫌ったシロアリが一時的に近づかなくなったものの、駆除剤の効果が薄れたらまた寄ってきた
  • 駆除剤の散歩量が不十分であったため、しばらくするとシロアリが元気を取り戻して再び活動を開始した

これでは駆除剤を購入したお金を無駄にするだけでなく、住宅被害が拡大してしまうかもしれません。シロアリ駆除剤はしっかりと散布しないと、そもそも作業する意味さえなくなってしまうのです。

人への安全性とシロアリ駆除効果のバランスをしっかり見極めるためにも、駆除剤の知識をしっかり身につけておいてください。

ネオニコチノイド系の駆除剤

ネオとは「新しい」という意味です。ニコチノイドの語源はタバコの「ニコチン」と同じです。
ネオニコチノイド系の駆除剤は、化学構造がニコチンと似た構造をしていて、比較的最近に開発されました。

シロアリに特異的に効く

ネオニコチノイド系の駆除剤は昆虫に特異的に作用する特徴があります。「特異的に作用する」とは「特定の対象物だけに特別に効果を発揮する」という意味です。ネオニコチノイド系のシロアリ駆除剤はシロアリだけに特別に毒性を持ち、人やペットへの安全性が高いといわれています。
ネオニコチノイド系の駆除剤に接触したシロアリは神経が麻痺して異常な興奮状態に陥り正常に動くことができなくなります。そのうち死んでしまいます。

嫌がられない(忌避性が低い)から効果が高まる

シロアリ駆除剤には忌避性(きひせい)が高いものと低いものがあります。忌避性とはシロアリが嫌がる度合いのことです。
忌避性が高いほどシロアリがその駆除剤を嫌うので、シロアリを寄せ付けない効果が期待できます。
一方、忌避性が低い駆除剤はシロアリが安心して寄ってくるので、駆除剤の毒性をシロアリに浴びせることができます。

ネオニコチノイド系の駆除剤は忌避性が低いので、シロアリが知らぬ間に毒を浴びることになります。

ドミノ効果も期待できる

駆除剤の毒性が強すぎると、その駆除剤に触れたシロアリは死にますが、仲間のシロアリには効果がありません。しかしネオニコチノイド系の駆除剤は緩やかに作用するタイプですので、駆除剤を浴びたシロアリはすぐには死なずに仲間のシロアリと接触します。そのため仲間のシロアリも毒を浴びることになります。このようにドミノ倒しのように駆除できる駆除剤のことを「ドミノ効果が高い」薬といいます。
ネオニコチノイド系の駆除剤は、ドミノ効果が高いとされています。

オプティガード20EC

ネオニコチノイド系の駆除剤の1つに、オプティガード20ECという製品があります。オプティガード20ECには、

  • シロアリの致死効果
  • シロアリの予防効果
  • 木材の腐敗予防効果
  • 住宅のカビ予防効果

があります。

また、オプティガード20ECは嫌な臭いが少ないというメリットもあります。

住宅の木材に塗る方法

オプティガード20ECは、駆除剤1リットルに対し、水19リットルで薄めて使います。これをオプティガード20ECの希釈液(きしゃくえき、薄めた液体という意味)といいます。
オプティガード20ECの希釈液は住宅の木材部分に、刷毛やポンプなどで塗りつけます。1平方メートルあたり300ミリリットルを塗りつけていきます。

穿孔処理の仕方

シロアリ被害が広がっている場合、住宅の床下の柱などの木材にドリルで穴を開けて、オプティガード20ECの希釈液を注入する駆除方法があります。これを穿孔(せんこう、穴を開けるという意味)処理といいます。

直径6~13ミリのドリルで木材の厚さの半分の穴を開けてオプティガード20ECの希釈液を注入します。その後、オプティガード20ECの希釈液に浸しておいた木栓(もくせん)で穴をふさぎます。木栓とは木の釘のようなものです。

使用上の注意点

オプティガード20ECの使用上の注意は以下の通りです。

  • オプティガード20ECを散布するときは病気の人、妊婦、幼児などにかからないようにしてください
  • 駆除作業をするときは食品や食器、衣類、ペット、観葉植物などを移動させ、オプティガード20ECがかからないようにしてください
  • オプティガード20ECが穀物や米にかかったら処分してください
  • オプティガード20ECを散布する人は、長袖の作業衣、作業帽、保護メガネ(ゴーグル)、保護靴、ゴム手袋を着用してください
  • 通気性の悪い場所で作業を行う場合、排気装置を設置するなどして換気に注意してください
  • オプティガード20ECは引火の恐れがあるので、火気厳禁です
  • 使用上の注意点はほかのシロアリ駆除剤でも同じですので、以下の章では解説を省略しています。どの駆除剤を使うときも、上記の注意は厳格に守ってください。

    カーバメート系

    カーバメート系のシロアリ駆除剤も、シロアリの神経を破壊し、シロアリを異常な興奮状態にさせて中毒死させます。カーバメート系の薬剤は除草剤としても使われます。
    カーバメート系の有効成分であるフェノブカルブはシックハウス症候群の原因物質ともいわれ、取り扱いに注意が必要です。

    効果は高いが扱いづらい

    カーバメート系の駆除剤はシロアリに対する効果は高いのですが、揮発性が高く住宅内の空気を汚染する可能性があります。また人やペットへの毒性もやや強い特性があります。毒性が強いゆえに、目に見える範囲のシロアリを殺すときには効果を発揮するのですが、駆除剤に触れたシロアリ以外も倒すドミノ効果は高くはありません。

    バクトップMC

    カーバメート系のシロアリ駆除剤の1つに、バクトップMCがあります。バクトップMCはシロアリの種類を選ばず効果を発揮するという頼もしい特徴があります。

    4種類のシロアリに対応し即効性がある

    住宅を食い荒らすシロアリとしては国内にヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリがいますが、バクトップMCはこのすべてに殺虫効果を発揮します。
    しかも毒性が強いのでシロアリがすぐに死にます。即効性が高い駆除剤の1つです。

    木材の塗り方

    バクトップMCも希釈して使います。バクトップMC1リットルに対し、19リットルの水で薄めてください(20倍希釈)。
    住宅の床下の木材に、1平方メートル当たりバクトップMC希釈液を5リットル塗ってください。

    土壌処理の仕方

    バクトップMC希釈液は、土の上に散布しても効果的です。シロアリは地中の巣から地面を歩いて住宅の基礎にたどりつき、そこから家中に拡散していきます。土の上にバクトップMC希釈液を散布することで、シロアリが住宅の基礎にたどりつけなくするのです。
    土壌1平方メートル当たりバクトップMC希釈液を3リットルまいてください。

    より注意深い作業を

    バクトップMCの使用上の注意はオプティガード20ECと同じですが、毒性がより強いため注意深く作業をしてください。

    ピレスロイド系

    ピレスロイド系のシロアリ駆除剤は、防虫菊に含まれる殺虫成分を参考にしてつくられた合成殺虫剤です。シロアリをけいれんさせたり麻痺させたりして退治します。駆除剤の散布量が少ないとシロアリが弱るだけで再び息を吹き返すこともあります。その点では、効果はやや低めといった評価がなされています。
    ただ人体やペットへの悪影響が小さく、安全性が高い駆除剤といえます。

    またピレスロイド系の駆除剤はシロアリの忌避性が高いため、散布した場所にはシロアリは近づかないのですが、散布し忘れた場所にシロアリが集中する恐れがあります。そのため駆除剤をむらなく全体的に散布する必要があります。

    天然ピレトリンMC「SES」

    ピレスロイド系のシロアリ駆除剤の1つに、天然ピレトリンMC「SES」という製品があります。この製品は天然の防虫菊を使っているので、安全性が高いとされています。

    木材に塗る方法

    天然ピレトリンMC「SES」には、住宅の柱などに塗り付ける「木部用」があります。こちらは20倍に希釈して使います。駆除剤1リットルに対し、水19リットルで薄めます。

    1平方メートル当たり300ミリリットルの天然ピレトリンMC「SES」希釈液を塗り付けてください。穿孔処理に使うこともできます。

    土壌処理する方法「100倍希釈に注意」

    「木部用」と書かれていない天然ピレトリンMC「SES」は、土壌処理用の駆除剤です。
    こちらは100倍希釈になっていますので注意してください。

    20倍希釈の駆除剤を100倍希釈してしまった場合、駆除剤の効果が減るだけで済みますが、100倍希釈の駆除剤を20倍希釈にしてしまうと、人への健康被害が発生しかねません。

    天然ピレトリンMC「SES」を土壌処理する場合は、天然ピレトリンMC「SES」1リットルに対し水99リットルを加えてください。
    これを住宅の床下の地面などに、1平方メートル当たり3リットルを散布してください。

    フェニルピラゾール系

    フェニルピラゾール系のシロアリ駆除剤は、少量で高い殺虫効果を発揮します。しかも忌避性がないのでシロアリは安心してフェニルピラゾール系駆除剤に近付きます。そのため、駆除剤に触れていない仲間のシロアリを倒すドミノ効果が期待できます。

    人への毒の影響を減らすためマイクロカプセル化している

    フェニルピラゾール系のシロアリ駆除剤は毒性が高いため、人への健康被害が懸念されます。そこでメーカーは、駆除剤をマイクロカプセルに閉じ込めて簡単には毒が広がらないようにしました。
    マイクロカプセルは、人が飲むカプセル薬のようなものです。カプセル薬はカプセルの中に薬が入っているため口や喉では溶けません。カプセル薬が胃や腸に到達してカプセルが溶けて薬が作用し始めます。
    マイクロカプセルは超微小のカプセルに駆除剤を閉じ込めています。シロアリの体にマイクロカプセルを付着させて自分たちの巣に持ち帰らせ、巣の中でマイクロカプセルが破れることで巣の中のシロアリを退治するのです。

    グレネードMC「SES」

    フェニルピラゾール系のシロアリ駆除剤の1つにグレネードMC「SES」があります。この製品もマイクロカプセル化して安全性を高めています。
    グレネードMC「SES」の特長は、ドミノ効果と即効性を兼ね備えたところです。グレネードMC「SES」に接触したシロアリがこの駆除剤を巣に持ち帰るため、ドミノ効果が期待できます。さらに毒性が強いので、職蟻(働きシロアリ)も兵蟻(兵隊シロアリ)もたたくことができます。

    使い方

    グレネードMC「SES」は125倍に希釈して、床下などの土壌に散布します。
    125倍希釈とは、グレネードMC「SES」1リットルを水124リットルで薄めることをいいます。
    地面1平方メートル当たり3リットルのグレネードMC「SES」希釈液を散布してください。

    まとめ~作業者自身の防護も忘れずに

    シロアリ駆除剤を散布するときは、作業者自身の防護を忘れないようにしてください。毒に最も近づくからです。駆除剤メーカーは「安全」と言っていますが、それはプロの駆除業者が適切に扱ったときのことです。一般の方がシロアリ駆除作業をするときは、まずは自らの身を守ることから始めてください。