日本に生息するシロアリの多くは土の中に巣をつくります。

また、巣から住宅に向かうときも、シロアリは地中にトンネルを掘って進みます。
そのため、シロアリ駆除では土中や地面に薬剤を散布します。これを土壌処理といいます。

土壌処理はシロアリ3大駆除法の1つですので、とても重要です。詳しく解説します。

土壌処理の対象になるシロアリとは

住宅を食い荒らすシロアリは、国内には次の4種類があります。

  • ヤマトシロアリ
  • イエシロアリ
  • アメリカカンザイシロアリ
  • ダイコクシロアリ

このうちヤマトとイエが、国内で最も大きな被害を出している2大メジャーです。

ヤマトとイエの2大メジャーを叩く

ヤマトシロアリは東北、北海道でも被害を出しています。イエシロアリもかなり北上しています。
いずれも土の中に巣をつくるので、土壌処理による駆除が必要になります。

よって土壌処理は、木部処理、ベイト工法と一緒にシロアリ3大駆除法と呼ばれているのです。

アメリカとダイコクには効かない

アメリカカンザイシロアリは住宅の木材の中を食べて空間をつくってその中に住むため、土壌処理は有効ではありません。
ダイコクシロアリも木材の中で生活するので、土壌処理は効果がありません。

ただアメリカカンザイシロアリは勢力を拡大しているものの、まだ全国的に広がっているわけではありません。
ダイコクシロアリもマイナーなシロアリで、まだ本州では見つかっていません。

シロアリ駆除における土壌処理の位置づけ

土壌処理、木部処理、ベイト工法の3大駆除法はそれぞれ目的が異なるのですが、住宅被害が大きい場合、この3種類をすべて実施することも珍しくありません。

【参考】木部処理とは

木部処理は、住宅の床下でむき出しになっている木材に薬剤を付着させる工法です。専用の器具で液体の薬剤を霧状にして散布する方法と、刷毛を使って薬剤を塗る方法があります。
木材に細い穴を開けて、その空間に薬剤を注入する穿孔(せんこう、穴を開けるという意味)注入処理もあります。
いずれも木材にシロアリを近づけないようにします。

【参考】ベイト工法とは

ベイト工法は、毒エサをプラスチック容器に入れて、容器ごと土の中に埋める方法です。
シロアリが毒エサを巣に運び、巣の中で毒成分が広がってコロニーごと壊滅させます。

【本題】土壌処理とは

土壌処理は薬物をまくという点で木部処理と似ていますが、使う薬剤は異なります。
土壌処理の薬剤については後ほど詳しく説明します。

木部処理は、シロアリのエサである木材に注目するので「点攻撃」になります。

土壌処理はシロアリの活動エリアに注目するので「面攻撃」「空間攻撃」になります。
土壌処理には8つの方法があります。

土壌処理の8つの方法とは

社団法人日本しろあり対策協会は土壌処理の方法として、次の8つの方法を挙げています。

  • 帯状散布法
  • 面状散布法
  • 加圧注入法
  • 土壌表面皮膜形成工法
  • 発泡施工法
  • 土壌表面シート敷設工法
  • パイプ吹付工法
  • 防蟻束工法

1つずつ解説します。

帯状散布法

土壌処理の帯状散布は、作業員が住宅の床下にもぐり、住宅の基礎部分や束石(つかいし)、配管の立ち上がり部に近い土壌に薬剤をまく手法です。

束石とは基礎を支える石やコンクリートのことです。配管の立ち上がり部とは、土中の中から住宅に向かって伸びている配管が地上に現れた部分のことです。

基礎、束石、配管と土が接触する地点から幅20センチの帯状に薬剤をまくため、帯状散布法といいます。
帯状散布する土壌は住宅に接触していて、ここがシロアリにとっての住宅の出入り口になっています。
シロアリに住宅への最初の一歩を踏ませないためにも帯状散布は欠かせません。

面状散布法

面状散布は、床下の土壌の表面に広範囲に薬剤を散布します。面状散布によって、シロアリが住宅エリア内に入らないようにします。
面状散布で防ぎきれなかったシロアリを帯状散布で除去するわけです。

加圧注入法

加圧注入法は、面状散布法の一種です。強力な圧力で薬剤を吹き出す機械を使って、土の中に薬剤を注入していきます。
1メートルおきに機械の先端を土中に突き刺して薬剤を注入していくのでとても手間がかかりますが、その分効果は高まります。

土壌表面皮膜形成工法

土壌表面皮膜形成工法は、住宅の床下に薬剤を吹き付ける点では、面状散布法と同じです。
ただこちらの工法は土壌に皮膜をつくる特殊な薬剤を使うところが異なります。

発泡施工法

発砲施工法では、発泡用防蟻薬剤と水、発泡剤の3種類の液体を使います。
この3つの液体を混ぜてつくる発泡作業液は、泡状になります。
この泡を大量につくり住宅の床下の空間に充満させて薬剤を隅々まで行き渡らせます。

泡の性質上、狭い空間にも侵入していくので、薬剤の塗布漏れが小さい特長があります。

土壌表面シート敷設工法

土壌表面シート敷設工法は、薬剤を含ませた耐久性の高いシートを床下の土壌の表面に敷いていく方法です。土全体に「ふた」をするようなイメージです。このシートは湿気を取り除くこともできるので、床下をシロアリが嫌う乾燥した環境にすることもできます。

パイプ吹付工法

パイプ吹付工法ではまず、住宅の床下に特殊合成樹脂製のパイプを張り巡らせます。
そのパイプにはところどころに小さな穴が開いていて、パイプの中に薬剤を流し込むとその穴から薬剤が噴射される仕組みです。

パイプを床下に設置する手間はかかりますが、一度設置してしまえばあとは機械で薬剤をまくだけなので、薬剤散布のたびに作業員が床下に潜る必要はなくなります。

防蟻束工法

束(つか)とは、住宅の床面と地面の間に差し込む木の柱です。
束があることで住宅はいわば空中に浮いている状態になり、通気性が確保できます。
防蟻束(ぼうぎつか)とは、シロアリを寄せつけない処理を施した高強度の合成樹脂でつくられた特殊な束です。

シロアリは、土→束→住宅内部という経路で侵入してくるので、束を防蟻束に変えれば、住宅内部への侵入を妨げることができるのです。
ただ、防蟻束を使ってもシロアリは基礎や配管から住宅内部に侵入できてしまいます。

よって束を防蟻束に変えても、基礎や配管部分には帯状散布は必要になります。

土壌処理に使う薬剤とは

土壌処理に使う薬剤は、木部処理に使う薬剤とは異なります。土壌処理用薬剤はさらに、液体と粒状に分かれます。ここでは日本しろあり対策協会が認定する土壌処理用薬剤を紹介します。

オプティガードZT

オプティガードZTは人やペット、水性動物への毒性が低く、安全性が高いのが売りです。さらにシロアリ殺傷能力が高く、毒の効果が持続しやすいという長所もあるため、土壌処理薬剤の定番商品となっています。

人に優しく効果も高い定番

オプティガードZTは忌避性が低いため、シロアリが油断してオプティガードZTに近寄って毒を浴びやすくなります。忌避性とは「シロアリがその薬剤を嫌がる度合い」のことで、忌避性が低いとシロアリがその薬剤に近づき、忌避性が高いとシロアリはその薬剤から遠ざかろうとします。
オプティガードZTは液体で、200倍に薄めて使います。帯状散布法では1平方メートル当たり5リットル、面状散布法では同3リットルを土壌にまきます。

アジェンダMC

アジェンダMCも忌避性が低く、シロアリに毒成分を付着させやすい性質があります。薬剤を超微小なマイクロカプセルに閉じ込めているので、毒性が広がりにくく人への影響が小さい特性があります。シロアリが体についたアジェンダMCを巣に持ち帰ったときにマイクロカプセルが割れ、中の毒が巣の中に広がるというわけです。

薬剤を微小カプセルに閉じ込めているので安全性が高い

アジェンダMCも液体で、100倍に薄めて使います。帯状散布法は1平方メートル当たり5リットル、面状散布法では同3リットルをまきます。

粒状ネオターマイトキラー

粒状ネオターマイトキラーはシロアリのほか、クロアリ、ゲジゲジ虫、ワラジムシ、ダンゴムシにも効果を発揮します。粒状なので砂をまくように散布します。

帯状散布法では1平方メートル当たり2.5キログラム、面状散布法では同1.5キログラムまきます。

土壌処理はいくらくらいかかるのか

シロアリ駆除を業者に依頼する場合、土壌処理と木部処理を同時に行うことが多いようです。

業者に依頼すると土壌処理と木部処理を同時に実施、1坪3,000円代~

土壌処理と木部処理を両方行った場合の料金は、最安レベルだと1坪当たり3,000円代で済みます。費用が高い業者だと1坪当たり6,000~8,000円という金額を請求されるかもしれないので注意してください。

ちなみに白蟻駆除住宅補強協同組合(白住協)は1坪当たり3,498円(税抜)とかなり安い部類に属します。

家主が自分でやっても30坪で8万円かかる

家主が自分で土壌処理を行う場合、住宅の床下に潜って匍匐前進(ほふくぜんしん)しながら薬剤散布を行うことになります。そのためDIYで土壌処理を行う方は、液体を吹き付ける機械が必要ない、粒状の土壌処理薬剤を使ってはいかがでしょうか。

粒状ネオターマイトキラーは1袋20キログラム入りで約1万円です。粒状ネオターマイトキラーは面状散布法で1平方メートル当たり1.5キログラム必要になるので、1袋20キログラムで13平方メートル(3.9坪)分となります。30坪の家ですと、7.6袋の粒状ネオターマイトキラーが必要になるので、大体8万円ほどかかります。

床下は狭く暗い空間で通気性も悪いので、危険を伴います。家主が自分で土壌処理を行う場合は、次の章で紹介する注意点を守って行ってください。

家主が自分で土壌処理するときの注意点

家主が自分で土壌処理をするときは、正しい使用方法で、安全に注意しながら行ってください。

なお、絶対に1人で実施しないでください。1人が住宅の床下に潜ったら、最低1人は住宅の中に待機し、床下に入った人が抜け出せなくなったらすぐに救急車を呼んでください

土壌処理薬剤の使用方法

土壌処理薬剤は、液体タイプは水で薄めて使います。

水の量を間違って濃くしてしまうと住人に悪影響を及ぼすかもしれませんし、薄すぎるとシロアリを叩く効果が出なくなります。水を加える量は薬剤ごとに異なるので説明書通りの希釈液をつくってください。

水の量、散布する量は説明書通りに

薬剤を散布する量は、帯状散布(基礎に近い土壌にまく)と面状散布(全体的にまく)で異なります。さらに薬剤によっても散布量が異なりますので注意してください。

土壌処理の前に床下をきれいにしておいて

土壌処理薬剤を散布する前に、床下の空間の清掃を行ってください。ごみなどがあると薬剤が土壌に浸透しません。また住宅を建てたときに放置された木片などがあると、それがシロアリのエサになってしまうので、床下で余計なモノが見つかったら捨てておいてください。

地面を平らに整地する

束や基礎に接触している地面は斜めになっていることがあります。可能な限り平らに整地してから薬剤を散布してください。地面が斜めのままだと、坂の上部に薬が滞在できなくなるためです。
近くに井戸がある場合は、土壌処理をしないほうがいいでしょう。

薬剤を散布するときの注意

薬剤を散布する前に、説明書を熟読してください。最近のシロアリ駆除薬剤は人への健康被害を最小限にした成分を使っていますが、毒には違いないので取り扱いは十分注意してください。

病気の方、妊婦、乳幼児、食品などは一時避難させる

薬剤を散布する日は、家の中に病気の方、妊婦、乳幼児がいないようにしてください。また薬剤が、食品、食器、寝具、衣類、ペット、庭木などにかからないようにしてください。薬剤が誤ってかかってしまった食品は廃棄してください。

作業者が最も危険。防護を忘れずに

薬剤をまく人は、長袖の作業衣、作業帽、保護メガネ、保護マスク、長靴、ゴム手袋で自分を防護してください。
床下の通気性が悪い場合、床下専用の換気扇を使って換気しながら作業してください。
薬剤を散布した後は、すぐに洗剤で全身を洗ってください。散布作業で使った容器類は産業廃棄物として処分してください。
散布中に気持ち悪くなったり薬剤を吸ってしまったりしたら、作業をやめて安静にしてください。症状が悪化した場合、医者にかかってください。

汚染が拡大しそうになったら警察、消防に通報を

薬剤が河川や井戸、池などに誤って入ってしまった場合、警察と消防に通報して汚染が拡大しないようにしてください。

まとめ~土壌処理は予防にもなる

土壌処理はシロアリ予防にもなります。被害がまだ出ていない住宅でも使うことができます。シロアリはしぶとい害虫ですので、人間もさまざまな方法で退治に臨まなければならないでしょう。